特定化学物質・有機溶剤等の作業環境測定【労働安全衛生法】

労働安全衛生法

この測定は何のためにあるのか

塗装、印刷、洗浄、研究・検査などで有機溶剤や特定化学物質を扱う作業場では、空気中にその物質の蒸気や粉じんが漂い、働く人が吸い込むことで健康を害するおそれがあります。作業環境測定は、作業場の空気中の濃度を定期的に測り、その結果を評価して、換気設備の改善などの対策につなげるための制度です。

対象になる作業場

  • 有機溶剤:トルエン、キシレン、アセトンなど、法令で定める有機溶剤(第1種・第2種)を扱う業務を行う屋内作業場
  • 特定化学物質:ベンゼン、ホルムアルデヒド、塩素など、法令で定める特定化学物質(第1類・第2類)を製造したり扱ったりする屋内作業場

ビルでは、テナントの工場・研究所・印刷所、病院の検査室などが該当することがあります。作業環境測定の義務を負うのは、その作業場で労働者を働かせている事業者(テナントなど)です。

測定の頻度

6か月以内ごとに1回、定期に測定します。

誰が測定するのか

有機溶剤や特定化学物質を扱う作業場は、作業環境測定法の「指定作業場」に当たるため、国家資格を持つ作業環境測定士に測定させる必要があります。自社に作業環境測定士がいない場合は、登録を受けた作業環境測定機関に委託します。

令和8年10月からは、労働者の体に測定器を付けて測る「個人ばく露測定」も、作業環境測定の一部として、決められた登録を受けた作業環境測定士などが行うことになりました(詳しくは下の「令和8年10月からの変更」をご覧ください)。

測定結果の評価と対策

測定を行ったら、そのつど、国の「作業環境評価基準」に従って結果を評価し、作業場を次の3つに区分します。

区分 状態 必要な対応
第1管理区分 作業環境の管理が適切 現状の維持に努める
第2管理区分 改善の余地がある 設備や作業方法の点検・改善に努める
第3管理区分 管理が適切でない 直ちに設備や作業方法を点検し、改善のための措置を講じる。改善までの間、有効な呼吸用保護具を使用させる

第3管理区分が続く場合の対応(令和6年4月から)

第3管理区分と評価された作業場については、令和6年(2024年)4月から、対応がさらに強化されました。

  • 事業場に属さない外部の「作業環境管理専門家」に、改善できるかどうかと改善の方法について意見を聴く
  • 改善が難しいと判断された場合などは、労働者の体に測定器(試料採取機器)を付けて濃度を測る方法などで、有機溶剤等の濃度を測定し、その結果に応じて有効な呼吸用保護具を使わせる(測定の位置づけは、令和8年10月から変わりました。下の「令和8年10月からの変更」をご覧ください)
  • 面体のある呼吸用保護具が顔に適切に密着しているかを確認(フィットテスト)し、記録を3年間保存する
  • 「保護具着用管理責任者」を選任する

令和8年(2026年)10月からの変更:個人ばく露測定が作業環境測定に加わりました

労働者の体に測定器を付けて、その人が吸い込む有害物質の量を測る「個人ばく露測定」は、これまで作業環境測定とは別の規定にもとづく措置として扱われ、測定の方法や測定する人の要件が十分に決まっていませんでした。令和8年(2026年)10月1日の改正で、個人ばく露測定は作業環境測定の一部として位置づけられ、労働安全衛生法に第65条の3が新設されました。

個人ばく露測定とは、作業環境測定のうち、作業環境における労働者の有害な因子へのばく露の程度を把握するために行うものです(作業環境測定法第2条第3号)。

作業環境測定を行う場面

  • 改善が難しい第3管理区分の作業場で、呼吸用保護具の選定などのために、労働者の身体に装着する試料採取機器を使って測定するとき。その後も、6か月以内ごとに1回、定期に測定します(労働安全衛生規則第42条の5)
  • 金属アーク溶接等作業を継続的に行う屋内作業場で、新たな溶接の方法を採用しようとするときなど(同条)
  • 第3管理区分の作業場で、改善のための措置を講じた後に、その効果を確認するために測定を行うとき(労働安全衛生法第65条の3第2項、労働安全衛生規則第42条の6)
  • 化学物質のリスクアセスメント(危険性・有害性等の調査)で、必要に応じて個人ばく露測定を行うとき(労働安全衛生法第65条の3第3項)。簡易的・予備的な測定は、ここでいう作業環境測定には含まれません

これらの測定は、国の「作業環境測定基準」に従って行う必要があります(労働安全衛生法第65条の3第4項)。第65条の3第1項の測定を行わなかった場合は、罰則の対象になります(同法第119条第1号)。

測定する人

指定作業場で行う場合は、作業環境測定士のうち、個人ばく露測定のデザイン(測定の計画)とサンプリング(試料の採取)について登録を受けた人が行います。自社にそのような人がいないときは、登録を受けた作業環境測定機関や指定測定機関に委託します(作業環境測定法施行規則第3条の2、第3条の3)。

サンプリングの一部は、作業環境測定士が方法を指定したものに限り、「サンプリング補助者講習」を修了した人が補助できます(同規則第3条の4、第3条の5)。

有機溶剤の測定方法の書き方が変わりました

有機溶剤中毒予防規則第28条の3の2は、改善が難しい第3管理区分の作業場の濃度測定の方法を、次のどちらかとしています。

  • 労働者の身体に装着する試料採取機器を用いて測定する方法
  • 作業環境測定法施行規則に定める個人サンプリング法で用いられる方法など、厚生労働大臣が定める方法

以前の条文にあった「個人サンプリング測定等」という呼び方は、なくなりました。厚生労働省の通達では、測定方法の中身を実質的に変えるものではないとされています。特定化学物質などの規則も同じ形に改正されていますが、特定化学物質の一部の物質は、後者の方法に限られます(特定化学物質障害予防規則第36条の3の2)。

測定の基準(作業環境測定基準)

個人ばく露測定のやり方は、国の「作業環境測定基準」(昭和51年労働省告示第46号)に定められています。令和8年(2026年)8月21日の告示(令和8年厚生労働省告示第325号)で、個人ばく露測定の基準が加わりました。改正前に別の告示(第三管理区分に区分された場所に係る有機溶剤等の濃度の測定の方法等など)で定めていた内容を、測定基準に移したものです。

  • 試料(空気)の採取は、労働者の身体に装着する試料採取機器で行います。採取口は、その労働者が呼吸する空気中の濃度を測るのに最も適切な部位に付けます
  • 第3管理区分の作業場での測定は、有害物質へのばく露の量がほぼ同じと見込まれる作業ごとに、適切な数(2人以上)の労働者に装着します。採取する時間は、その作業に従事する全時間です
  • リスクアセスメント対象物の測定(第15条)は、屋内作業場で行うものに限られます。測定する労働者の数、採取の時間や回数、測定の頻度は、濃度基準値の有無などに応じて適切に決めます

告示は改正されることがあります。実際に測定を依頼・実施するときは、最新の告示を、安全衛生情報センターや厚生労働省のサイトで確認してください。

記録の保存

測定と評価の記録は、3年間保存します。ただし、発がん性のおそれがあるなど一部の特定化学物質(特別管理物質など)の測定の記録は、30年間保存する必要があります。健康への影響が長い年月を経て現れることがあるためです。

関連する検査

有害物質を吸い取る局所排気装置などの点検については「局所排気装置等の定期自主検査」の記事をご覧ください。

根拠となる法令

労働安全衛生法第65条(作業環境測定)、第65条の2(結果の評価)、第65条の3(個人ばく露測定を含む作業環境測定。令和8年10月1日施行)、労働安全衛生規則第42条の5・第42条の6、有機溶剤中毒予防規則第28条〜第28条の3の2、特定化学物質障害予防規則第36条〜第36条の3の2、作業環境測定法第2条・第3条・第4条(作業環境測定士による実施)、同法施行規則第3条の2〜第3条の5に定められています。令和8年10月の改正の内容は、厚生労働省の通達(令和8年7月30日付け基発0730第2号、同年8月21日付け基発0821第2号)と、作業環境測定基準等を改正する告示(令和8年厚生労働省告示第325号)にもとづいています。

違反した場合

作業環境測定を行わなかった場合、または記録しなかった場合は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります(労働安全衛生法第119条第1号)。令和8年10月からは、第65条の3第1項の測定(改善が難しい第3管理区分の作業場などでの個人ばく露測定)を行わなかった場合も、同じ罰則の対象です。

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