PCBとは、なぜ期限があるのか
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、分解されにくく、人の健康や生活環境に被害を生ずるおそれがある物質です。PCBを含む廃棄物が長い間処分されないままになっていたため、国は、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)で、保管や処分のルールと、処分の期限を定めました(同法第1条)。
ビルの設備では、古い変圧器(トランス)、コンデンサ、安定器などが対象になります。環境省は、製造後30年以上たった古い電気機器にPCBが含まれている場合があるとして、施設内の電気設備を調べるよう呼びかけています。
2026年10月時点で、後で述べる低濃度PCB廃棄物の処分期限(2027年3月31日)まで、半年を切っています。
高濃度と低濃度の違い
PCB廃棄物は、含まれるPCBの濃度で、高濃度と低濃度に分けられます。
| 区分 | 濃度の目安 | 処分期間 |
|---|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 | PCBを含む油の場合、PCBの割合が重量で0.5%(5,000mg/kg)を超えるもの。機器の種類によっては、別の基準もあります(PCB特措法施行令第2条) | 終了しています。機器の種類と保管場所の地域ごとに、平成30年(2018年)から令和5年(2023年)にかけて、順に終わりました(同施行令の別表) |
| 低濃度PCB廃棄物 | 高濃度の基準以下で、PCBが0.5mg/kgを超えるもの(環境省の案内) | 令和9年(2027年)3月31日まで(PCB特措法第14条、同施行令第7条) |
高濃度PCB廃棄物は、環境省によると、国の処理会社(JESCO)への登録の受付が、令和7年(2025年)10月15日で終わっています。その後に新しく見つかった場合は、速やかに、管轄の自治体へ保管の状況を報告するよう求められています。
使用中の機器と、廃棄物になった機器の違い
同じ古いトランスでも、まだ使っているか、廃棄物になったかで、法律上の扱いが変わります。
- 使用中の機器(PCB使用製品):所有している事業者は、PCBを含む製品を、確実に廃棄するか、PCBを取り除くよう努めなければなりません(努力義務。PCB特措法第3条第2項)
- 廃棄物になった機器(PCB廃棄物):保管している事業者(保管事業者)は、自分の責任で、確実かつ適正に処理しなければなりません(同法第3条第1項)。低濃度のものは、期限までに処分するか、処分を他人に委託することが義務です(同法第14条)
調べて、処分するまでの流れ
- 対象かどうかを確認する:設備に、古いトランス、コンデンサ、安定器などがないかを調べます。製造年が目安になります(製造後30年以上たったものは、PCBを含む場合があるとされています)
- PCBが含まれるかを分析する:機器の絶縁油などを採取して、PCBの濃度を測ります。環境省の案内では、PCBが0.5mg/kgを超えるものが、低濃度PCB廃棄物にあたります
- 処分を委託する:PCBを含む廃油や、PCBが付着・封入された金属くずなどは、廃棄物処理法で特別管理産業廃棄物(特定有害産業廃棄物)にあたります(廃棄物処理法施行令第2条の4)。処理できる業者に委託します
- 届出をする:次の項で説明します
環境省は、低濃度PCB廃棄物の濃度の分析と処理について、助成金の案内も出しています。使える制度があるかは、環境省や自治体の案内で確認してください。
届出が必要なとき
PCB廃棄物を保管している事業者は、毎年度、保管と処分の状況を、都道府県知事(政令で定める市は市長)に届け出なければなりません(PCB特措法第15条で、第8条第1項を準用)。また、持っていたPCB廃棄物の全部の処分を終えたときも、その旨を届け出ます(同法第15条で、第10条第2項を準用)。
届出の時期や様式は、自治体によって違います。例えば、保管状況の届出を毎年4月1日から6月30日までと案内している自治体もあります。所在地の自治体のページで、確認してください。
期限のあとは、どうなるのか
低濃度PCB廃棄物の処分期間は、2027年3月31日で終わります。その後の制度について、環境省は検討を進めています。環境省の検討委員会の資料(2025年10月)の紹介記事によると、新しく見つかった低濃度PCB廃棄物や、不要になった低濃度PCB使用製品について、届出をして、一定の期間内に処理することを義務づける方向で検討しているとのことです。使用中の製品の管理も強めることが検討されています。具体的な内容は、これから決まる段階です。
確定した内容ではないので、最新の情報は、環境省のページで確認してください。
現場から:私の現場でのPCB調査と処分
ビルメンテナンスの現場責任者として、PCBの調査と処分を経験しました。
- 私の現場には、安定器はありませんでしたが、PCBを含む可能性のあるトランスやコンデンサがあり、調査を行いました。コンデンサは、低圧側の分電盤に入っている進相コンデンサです
- トランスは、絶縁油を採取して、測定業者に持ち込みました。調査の結果、PCBを含むものがあったので、廃棄業者に渡して、廃棄しています
- 2027年3月の期限の話は出ていますが、含有の可能性があるものは、あらかた調査と処分を終えているので、ほぼ問題ないと考えています
ビル管理の立場で知っておきたいこと
- 古いビルでは、トランスやコンデンサなどの電気設備が、設置されてから長い年月がたっていることがあります。高圧の受変電設備だけでなく、低圧側の分電盤の中にある進相コンデンサのような場所も、見落とさないようにします。設備の台帳と実物を見比べて、製造年の古い機器がないかを確認すると安心です
- 調べた結果は、機器ごとに記録を残しておきます。分析の結果、処分した日、委託先などを、あとから説明できるようにするためです
- 分析や処分には、測定業者や廃棄業者との調整が必要です。期限が近づくと、手配が混み合うこともあります。含有の可能性が残っているものがあれば、早めにオーナーや管理会社と相談してください
- ビルの設備で出る廃棄物の考え方は、蛍光灯・水銀ランプ・蓄電池の処分と保管の記事も参考になります
根拠となる法令
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)の第3条(事業者の責務)・第8条(保管等の届出)・第10条(処分)・第14条(その他のPCB廃棄物の処分)・第15条(準用)などに定められています。使用中の製品の努力義務は第3条第2項、高濃度の使用製品の廃棄は第18条です。処分期間は、同法施行令(高濃度は第6条と別表、低濃度は第7条)で定められています。PCBを含む廃棄物が特別管理産業廃棄物にあたることは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条の4に定められています。
違反した場合
- 処分期間内に処分しないなど、PCB特措法の義務に違反すると、環境大臣や都道府県知事から、期限を定めて処分などの措置をとるよう改善命令が出されることがあります(第12条。低濃度は第15条による準用)。この命令に違反すると、3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金の対象です(第33条)
- PCB廃棄物を、むやみに譲り渡したり、譲り受けたりすることは禁止されています(第17条)。違反すると、同じく3年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金の対象です(第33条)
- 保管や処分の届出をしなかったり、うその届出をしたりすると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です(第34条)
この記事は一般的な解説です。自分の設備が対象かどうかや、届出の方法は、所在地の自治体や環境省に確認してください。


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