この検査は何のためにあるのか
エレベーターやエスカレーターなどの昇降機が、安全に動いているかを専門家が定期的に検査し、その結果を行政(特定行政庁)に報告する制度です。建築基準法第12条第3項に定められている「定期報告制度」の一つです。昇降機は毎日多くの人が使う設備で、ブレーキの不具合などがあると、挟まれや墜落といった重大な事故につながります。
対象になる設備
- エレベーター(乗用・人荷用・寝台用など)
- エスカレーター
- 小荷物専用昇降機(ダムウェーター。料理などを運ぶ小型のもの)
昇降機は、建築設備の検査(換気・排煙など)と違い、国が一律に報告の対象としています。ただし、住戸内だけで使うホームエレベーターなど、使用頻度が低く事故のおそれが少ないものとして国が定めるものは除かれます。
検査の頻度
おおむね6か月から1年ごとに、特定行政庁が定める時期に報告します。多くの自治体では年1回です。新しく設置した昇降機は、完了検査の検査済証を受けた直後の報告時期は除かれます。
検査の主な内容
- 巻上機(モーター)、ブレーキ、主索(ワイヤーロープ)の摩耗や損傷
- かごや乗り場の戸の開閉と、戸が開いたまま動かないための安全装置の作動
- 非常止め装置、停電時の照明、かご内から外部へ連絡するインターホン
- 地震時管制運転装置(地震を感知すると最寄りの階に止まって戸を開く装置)の作動
- エスカレーターの手すり・踏段の状態、非常停止ボタン、挟まれ防止の装置
検査できる人
一級建築士・二級建築士、または昇降機等検査員の資格を持つ人が検査を行います。実際には、エレベーターのメーカー系の保守会社や、独立系の保守会社の検査員が行うことがほとんどです。
法定検査と「保守点検」の違い
メーカーや保守会社による月1回などの「保守点検」は、この法定検査とは別の、契約に基づく点検です。ただし、建物の所有者には建物や設備を常に適法な状態に保つ努力義務があり(建築基準法第8条)、日常の安全のためには保守点検も欠かせません。保守契約には、大きく2つの種類があります。
| 契約の種類 | 内容 |
|---|---|
| フルメンテナンス(FM)契約 | 点検に加えて、消耗部品や主要部品の交換・修理費用まで含む契約。月額は高めだが、突発的な修理費がかかりにくい |
| POG(パーツ・オイル・グリス)契約 | 点検と、油脂類や小さな消耗品の補充が中心の契約。月額は安いが、部品交換や修理は別途費用がかかる |
古いエレベーターの「既存不適格」
平成21年(2009年)9月の基準改正で、新しく設置するエレベーターには、戸が開いたままかごが動いたときに自動で止める「戸開走行保護装置」と、地震を感知して最寄りの階に止まる「地震時管制運転装置」の設置が義務づけられました。それより前に設置されたエレベーターで、これらの装置がないものは「既存不適格」として、定期検査の報告書にも記載されます。すぐに違法になるわけではありませんが、改修や更新の計画を立てる際の大事な検討事項になります。
現場から:昇降機の管理の実際
ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の運用をまとめます。
保守はフルメンテナンス契約、法定検査はエレベーター会社
私の担当している物件では、エレベーター会社と、基本的にフルメンテナンス(FM)の定期契約を結んでいます。法定検査も、そのエレベーター会社が実施しているため、ビルメンが立ち会うことは特にありません。
検査の日は事前に貼り紙
法定検査の日は、検査中のエレベーターが一時的に使えなくなります。テナントへの個別のお知らせはしていませんが、利用者が困らないよう、事前にエレベーターの乗り場に貼り紙をして知らせています。
閉じ込めや故障停止は警備会社が対応
閉じ込めや故障による停止などのトラブルは、基本的に警備会社が対応しています。エレベーターの非常用インターホンや遠隔監視の通報先は、建物によって、エレベーター会社・警備会社・防災センターなどさまざまです。いざというときに誰が駆けつけるのかを、事前に確認しておくことが大切です。
根拠となる法令
建築基準法第12条第3項と、建築基準法施行令第16条第3項(対象の昇降機)・同令第129条の10(エレベーターの安全装置)、建築基準法施行規則第6条(報告の時期)に定められています。
違反した場合
検査結果を報告しなかった場合、または虚偽の報告をした場合は、100万円以下の罰金の対象となります(建築基準法第101条第1項第2号)。実際には、罰則の前に、行政からの通知・督促などの段階を経るのが一般的です。
定期報告制度のほかの調査・検査については「特定建築物定期調査」の記事をご覧ください。


コメント