この資格は何のためにあるのか
劇場・ホテル・病院・店舗・事務所など多くの人が利用する建物の所有者(管理者)は、建物や設備の状態を定期的に専門家に調査・検査させ、結果を特定行政庁に報告しなければなりません(建築基準法第12条、定期報告制度)。
この調査・検査を行えるのは、一級建築士・二級建築士か、国土交通大臣の登録を受けた講習を修了して資格者証の交付を受けた人です。建物の調査を行う「建築物調査員」と、設備の検査を行う「建築設備等検査員」があり、全部で4種類に分かれています(平成28年6月の制度改正で現在の形になりました)。
4種類の資格と調査・検査の対象
| 資格者証の種類 | 調査・検査できるもの | 関連する定期報告 |
|---|---|---|
| 特定建築物調査員 | 建物の敷地・構造(外壁、屋上、避難施設、防火区画など) | 特定建築物定期調査 |
| 建築設備検査員 | 換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備・排水設備(昇降機を除く建築設備)と、これらと一体で検査するのが合理的な一部の防火設備 | 建築設備定期検査 |
| 防火設備検査員 | 防火扉、防火シャッター、耐火クロススクリーン、ドレンチャーなど(随時閉鎖式の防火設備) | 防火設備定期検査 |
| 昇降機等検査員 | エレベーター、エスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設 | 昇降機等定期検査 |
資格者証の種類ごとに調査・検査できる範囲が決まっています(建築基準法施行規則第6条の6)。たとえば、建築設備検査員は昇降機の検査はできません。なお、換気・排煙・非常用照明・給排水などの建築設備の検査は、国が一律に対象としているものではなく、特定行政庁が指定する建物が対象です(建築基準法施行令第16条第3項)。どの調査・検査が必要かは、建物のある自治体で確認しましょう。一方、一級・二級建築士は、資格者証がなくても4種類すべての調査・検査を行うことができます(建築基準法第12条第1項・第3項)。
取得方法
国土交通大臣の登録を受けた講習機関の講習(講義と修了考査)を受け、修了考査に合格すると修了証明書が交付されます。その後、国土交通大臣(地方整備局など)に申請して資格者証の交付を受けます。日本建築防災協会では、資格者証の申請を修了証明書の交付日から3か月以内に行うよう案内しています。
講習の実施機関と受講料(令和8年度)
| 資格 | 主な講習実施機関 | 講習 | 受講料(税込) |
|---|---|---|---|
| 特定建築物調査員 | 日本建築防災協会 | 講義(WEB視聴または会場4日間)+修了考査 | 54,450円 |
| 建築設備検査員 | 日本建築設備・昇降機センター | 講義25.5時間(WEB視聴3週間または会場4日間)+修了考査2時間 | 65,000円(建築設備士で科目免除の場合41,000円) |
| 防火設備検査員 | 日本建築防災協会 | 学科講習(WEB視聴または会場2日間)+修了考査、合格後に実技講習(3時間) | 学科34,650円+実技28,600円 |
| 昇降機等検査員 | 日本建築設備・昇降機センター | 講義(WEB視聴または会場)+修了考査 | 58,000円 |
※いずれも令和8年度の各機関の案内によります。講習は年1回程度で、WEB講習でも修了考査は会場で受けます。定員に達すると締め切られることがあるため、早めの申し込みが必要です。最新の日程・金額は各機関のホームページで確認してください。
受講資格(実務経験が必要)
講習は誰でも受けられるわけではなく、建築士の資格か、学歴に応じた実務経験が必要です(平成28年国土交通省告示第700号)。例として、建築設備検査員講習の受講資格は次のとおりです。
| 学歴・資格 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 大学(建築・機械・電気系の学科)卒業 | 建築設備に関して2年以上 |
| 短大(3年制)卒業 | 3年以上 |
| 短大(2年制)・高専・専門学校卒業 | 4年以上 |
| 高校(建築・機械・電気系の学科)卒業 | 7年以上 |
| 上記以外(学歴を問わない) | 11年以上 |
| 建築設備士、一級・二級建築士 | 不要 |
ここでいう実務経験には、建築設備の保守・点検・維持管理、風量測定(換気・排煙)、照度測定(非常用照明)、検査や検査補助などが含まれます。ビルメンテナンスで設備管理をしている人は、実務経験を満たせる可能性があります。ただし、点検や検査の立会いだけを行っている人や、営業・事務の担当者は実務経験に含まれません。
ほかの3つの講習も、建築士か、学歴に応じた実務経験(それぞれ建築、防火設備、昇降機などに関するもの)が必要です。詳しくは各講習機関の受講資格一覧で確認してください。
講習の科目(建築設備検査員の例)
建築設備定期検査制度総論、建築設備に関する建築基準法令、消防法令、建築学概論、換気設備、空気調和設備、排煙設備、電気設備、給排水衛生設備、建築設備の耐震規制・設計指針、建築設備定期検査業務基準、建築設備に関する維持保全の12科目(合計25.5時間)を受講し、最後に全科目から出題される修了考査(2時間)を受けます。
現場から:上長と一緒に建築設備定期検査を行った経験
私は4つの資格はいずれも持っていませんが、入社して間もない頃、上長と一緒に直営で建築設備定期検査を行いました。非常用照明は夜間にブレーカーを落として照度計で床面の照度を測り、換気設備は風速計で測った風速と開口面積から換気量を計算しました。詳しくは建築設備定期検査の記事に書いています。
このように、建築設備定期検査は、資格者が中心になりながら、ビルメンの設備担当者が測定などの作業に関わることもある検査です。こうした検査補助や日ごろの設備の点検・維持管理は、建築設備検査員講習の実務経験として認められる内容です。設備管理の経験を積んだビルメンにとって、建築設備検査員は次に目指せる資格の一つといえます。
ビル管理の立場で知っておきたいこと
- 定期報告を依頼する業者には、担当する調査・検査に合った資格者証(または建築士)を持つ人がいるか確認しましょう。日本建築設備・昇降機センターでは、有資格者を検索できる検査員等名簿をウェブで公開しています。
- 4種類の調査・検査は、報告の時期や頻度が別々に決まっていることが多いため、年間の点検計画にまとめておくと漏れを防げます。
- 定期報告をしなかったり、虚偽の報告をしたりすると、100万円以下の罰金の対象になります(建築基準法第101条第1項第2号)。
根拠となる法令
建築基準法第12条(定期調査・検査、調査・検査を行える人)、第12条の2(建築物調査員資格者証)、第12条の3(建築設備等検査員資格者証)、建築基準法施行規則第6条の6(資格者証の種類と調査・検査できる範囲、講習)、平成28年国土交通省告示第700号(受講資格)に定められています。


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