自家用電気工作物の年次点検(精密点検)【電気事業法】

電気事業法

この点検は何のためにあるのか

月次点検よりも踏み込んで、受変電設備を実際に停電させたうえで、絶縁抵抗の測定や保護装置の動作試験など、精密な点検を行うものです。電気が流れたままでは確認できない劣化や不具合を見つけるために行います。

対象になる建物

電力会社から高圧で電気を受けているなど、「自家用電気工作物」を設置している建物が対象です。対象の考え方は「月次点検」の記事をご覧ください。

点検の頻度

頻度は各建物の「保安規程」で定めますが、年1回以上が基本です。外部委託の場合の国の審査基準でも、年次点検は原則1年に1回以上とされています。

ただし、信頼性の高い機器を使っていて、停電させずに同等の点検を毎年行っている設備については、停電させて行う点検を3年に1回以上にできる仕組みもあります(いわゆる「無停電年次点検」)。適用の条件は、各地の産業保安監督部が示しています。

点検の内容(確認する主な項目)

項目 確認すること
絶縁抵抗 低圧の電路の絶縁抵抗が基準値以上であること、高圧の電路が大地や他の電路と絶縁されていること
接地抵抗 接地(アース)の抵抗値が基準値以下であること
保護継電器 保護継電器(異常時に遮断器を働かせる装置)の動作特性と、遮断器との連動動作が正常であること
非常用発電機 停電時に自動で起動し、送電後に停止すること、電圧・周波数が正常であること
蓄電池設備 セルの電圧、電解液の比重、温度などが正常であること

低圧の電路の絶縁抵抗の基準値は、国の技術基準で次のように決められています。

電路の使用電圧 絶縁抵抗値
300ボルト以下で、対地電圧150ボルト以下(一般的な100ボルトの照明・コンセントなど) 0.1メガオーム以上
300ボルト以下で、上記以外(200ボルトの動力など) 0.2メガオーム以上
300ボルトを超えるもの(400ボルト級など) 0.4メガオーム以上

このほか、設備の清掃や、ボルト・端子の締め付けの確認なども、停電のタイミングにあわせて行われることが多いです。

誰が点検するのか

選任された電気主任技術者、または外部委託先の電気保安法人・電気管理技術者の監督のもとで行います。実際の測定・試験は、専門の点検業者が行うことも多いです。

現場から:年次点検の実際

ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の流れをまとめます。

点検は外部に委託、時期は1月〜3月の冬場

私の現場では、年次点検は外部の業者に委託しています。時期は1月から3月の間が多いです。テナントに冷蔵庫や冷凍庫があるため、停電しても中の温度が上がりにくい冬に実施しています。私の現場は比較的大きな施設のため、停電時間は朝8時ごろから夕方17時ごろまでと、ほぼ1日がかりです。停電時間は、建物の規模や設備の量によって大きく変わり、小規模なビルであれば数時間で終わることもあります。

テナントへの周知は1か月前、新規テナントには半年前

停電のお知らせは、テナントに1か月前に行っています。新しく入居したテナントには、半年前に伝えるようにしています。毎年同じ時期に実施しているので、既存のテナントには「毎年この時期に停電がある」と認識してもらえています。入居の段階で伝えておくことで、テナント側も営業やシステムの予定を立てやすくなります。

当日のビルメンの役割

測定や試験そのものは業者が行い、私たちビルメンは主に次のことを担当しています。

  • 仮設電源の準備:点検の日だけ使う一時的な発電機を設置して配線を接続し、停電中も電気が必要な箇所に電力を供給します。私の現場では、冷蔵庫・冷凍庫など止められない設備を持つテナントが入っているため用意していますが、仮設電源が必要かどうかは、入居しているテナントの業種や設備によって異なります。
  • 鍵の対応:電気室や各テナント、機械室などの鍵の開け閉め
  • 絶縁不良箇所の調査:絶縁抵抗の測定で不良が見つかった回路について、原因となっている場所を探します。

復電後のトラブル:機器の故障やセキュリティ装置の不具合

停電から電気を戻した(復電した)後に、機器が故障したり、セキュリティ装置に不具合が出たりすることがあります。一度電源が切れることで、古い機器が立ち上がらなくなることもあります。復電後は、各設備が正常に動いているかを見て回ることが大切です。

年次点検で見つかる不具合

  • 絶縁不良
  • 電圧の不平衡(三相の電圧のバランスが崩れている)
  • 接地抵抗の増大
  • 蓄電池の経年劣化

見つかった不具合は、電気主任技術者と相談して、修理や更新の計画を立てます。

根拠となる法令

電気事業法第42条(保安規程)に基づき、各事業場の保安規程で定められます。外部委託の場合の点検の要件は、経済産業省の「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」で示されています。絶縁抵抗の基準値は「電気設備に関する技術基準を定める省令」第58条に定められています。

違反した場合

設置者と従業員は、保安規程を守らなければなりません(電気事業法第42条第4項)。保安規程の届出をしなかった場合や、国からの保安規程の変更命令に違反した場合は、30万円以下の罰金の対象となります(同法第120条)。また、設備が国の技術基準に適合していないと認められた場合は、修理や使用の一時停止などを命じられることがあります(同法第40条)。

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