電気主任技術者の選任【電気事業法】

資格

この制度は何のためにあるのか

自家用電気工作物(ビルの受変電設備など)の工事・維持・運用について、保安を監督する責任者を置くための制度です。建物の電気設備を安全に保ち、感電や火災、周辺まで停電させる波及事故を防ぐための、いわば電気設備の管理責任者です。

対象になる建物

自家用電気工作物を設置している建物(事業場)が対象です。電力会社から高圧(600ボルト超)や特別高圧(7,000ボルト超)で受電しているビル、工場、病院、学校などが当てはまります。

選任のルール

  • 免状を持つ人から選ぶ:電気主任技術者免状(第一種〜第三種)を持つ人の中から選任します。
  • 事業場ごとに1人:原則として、1人の電気主任技術者が複数の事業場を兼任することはできません。保安上支障がないとして国(産業保安監督部長など)の承認を受けた場合に限り、兼任できます。
  • 届出:選任したとき・解任したときは、遅滞なく国(産業保安監督部)へ届け出る必要があります。
  • 設置者の社員以外も選任できる:建物の所有者の社員だけでなく、ビルの管理を請け負うビルメンテナンス会社の社員が選任されることもあります。

免状の種類と担当できる範囲

免状 保安の監督ができる範囲
第一種電気主任技術者 すべての事業用電気工作物
第二種電気主任技術者 電圧17万ボルト未満
第三種電気主任技術者(電験三種) 電圧5万ボルト未満(出力5,000キロワット以上の発電所・蓄電所を除く)

一般的なビルの受電電圧(6,600ボルトや22,000ボルトなど)であれば、第三種で担当できます。資格の詳しい内容は「電気主任技術者とは?」の記事をご覧ください。

外部委託できるのは7,000ボルト以下の受電まで

自社で電気主任技術者を選任する代わりに、電気保安法人や電気管理技術者(個人事業の電気主任技術者)に保安管理業務を委託する「外部委託」の仕組みがあります。国(産業保安監督部長など)の承認を受ければ、電気主任技術者を選任しなくてもよくなります。中小規模のビルでは、この形が多く使われています。

ただし、ビルなどの需要設備で外部委託ができるのは、受電電圧が7,000ボルト以下の場合に限られます。22,000ボルトなどの特別高圧で受電している大きな建物では外部委託はできず、電気主任技術者を選任する必要があります。

また、一定の規模以下の設備では、国の許可を受けて、免状を持たない人を主任技術者に選任できる制度(許可選任)もあります。

電気主任技術者の権限

電気主任技術者は、保安の監督の職務を誠実に行わなければなりません。一方で、電気設備の工事や維持・運用に関わる人は、電気主任技術者が保安のために出す指示に従わなければならないと法律で定められています。

現場から:電気主任技術者の実際

ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の運用をまとめます。

特別高圧の大型施設では常駐で選任

私の現場は22,000ボルトの特別高圧で受電している比較的大きな施設のため、外部委託はできず、ビルメンテナンス会社(私の勤務先)の社員が電気主任技術者に選任され、現場に常駐しています。資格は第三種電気主任技術者(電験三種)です。建物の規模や受電電圧によって、選任の形(常駐か、外部委託か)は変わります。

主な仕事:点検の確認、年次点検の立ち会い、調整、内装工事の審査

電気主任技術者の主な仕事は、次のようなものです。

  • 月次点検の結果の報告を受け、確認する(点検作業は、自社の点検作業者が実施)
  • 年次点検の立ち会い
  • オーナーと工事業者・点検業者との調整
  • テナントの内装工事の申請の審査(電気容量や配線など、電気設備に関わる内容の確認)

テナントの入れ替えが多いビルでは、内装工事の電気の審査も大切な仕事です。テナントが勝手に大きな機器を増やしたり、配線を変えたりすると、容量不足や漏電の原因になるためです。

困りごと:電気主任技術者が少なく、現場経験のない人も多い

業界全体として、電気主任技術者の数が少ないと感じています。また、資格は持っていても、現場での実務経験がない人が多いのも実情です。試験に合格することと、実際の設備を安全に管理できることは別で、現場経験を積める環境が求められています。

根拠となる法令

電気事業法第43条(主任技術者の選任・届出・職務)と、電気事業法施行規則第52条(選任・外部委託・兼任)、第56条(免状の種類による監督の範囲)に定められています。

違反した場合

電気主任技術者を選任しなかった場合は、300万円以下の罰金の対象となります(電気事業法第118条第7号)。また、選任・解任の届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象です(同法第120条)。

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