この記事で扱うもの
ビルの管理では、照明の交換や設備の更新のたびに、使い終わった蛍光灯や水銀ランプ(HIDランプ)、設備の蓄電池が出ます。これらは、ふつうのごみとは別に、決まったルールで保管・処分する必要があります。
この記事では、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)のルールを中心に、保管と処分の方法を説明します。産業廃棄物と事業系一般廃棄物の違いや、許可業者への委託・マニフェストの基本は、産業廃棄物と事業系一般廃棄物の違いで解説しています。
蛍光灯・水銀ランプは「水銀使用製品産業廃棄物」
事業所から出た蛍光灯や水銀ランプは、産業廃棄物です。そのうえで、水銀が使われている製品のうち、環境省令で決められたものが産業廃棄物になったものは、水銀使用製品産業廃棄物として、ほかの産業廃棄物より細かいルールがかかります(施行令第6条第1項第1号ロ、施行規則第7条の2の4)。
対象の製品は施行規則の別表第四に並んでおり、ビルの管理に関係するものとしては、次のものがあります。
- 蛍光ランプ(直管・環形・コンパクト形など)
- HIDランプ(高輝度放電ランプ):水銀ランプ、メタルハライドランプ(セラミックメタルハライドランプを含む)、高圧ナトリウムランプなど
- 水銀を使った温度計・圧力計など
外灯や駐車場、倉庫の高天井などで使われているメタルハライドランプも、HIDランプとして対象になります。
保管するときのルール
産業廃棄物を、運び出すまで建物の中で保管するときは、産業廃棄物保管基準を守ります(法第12条第2項、施行規則第8条)。主な内容は、次のとおりです。
- 周囲に囲いを設けること
- 見やすい場所に、縦横それぞれ60センチメートル以上の掲示板を設けること。掲示板には、産業廃棄物の保管の場所であること、保管する産業廃棄物の種類、保管の場所の管理者の氏名(名称)と連絡先を書きます。水銀使用製品産業廃棄物を保管するときは、その旨も種類の欄に書きます。
- 飛び散ったり、流れ出たり、においが出たりしないようにすること
- 水銀使用製品産業廃棄物は、ほかの物と混ざらないように、仕切りを設けるなどの措置をとること(施行規則第8条第5号)
蛍光灯は、割れると中の水銀が出てしまいます。専用の箱や、交換した新品の箱に戻すなどして、割れないように保管するのが基本です。割れてしまったものは、割れていないものと分けて、袋や容器に入れて密閉し、委託先の業者に割れたものがあることを伝えてください。
処分を委託するときのルール
許可業者に委託する流れは、ほかの産業廃棄物と同じです。そのうえで、水銀使用製品産業廃棄物が含まれるときは、次の点が加わります。
- 委託契約書:委託する産業廃棄物に、水銀使用製品産業廃棄物が含まれる場合は、その旨を書きます(施行規則第8条の4の2)。
- マニフェスト:産業廃棄物の種類の欄に、水銀使用製品産業廃棄物が含まれることを示し(施行規則第8条の20)、その数量を記載します(施行規則第8条の21)。
- 業者の許可の範囲:委託先の許可証で、水銀使用製品産業廃棄物を扱えるかを確認します。蛍光灯は扱っていても、別の種類は扱っていない業者もあります。
処分を受けた業者は、水銀が大気中に飛び散らないように処理することが求められています(施行令第6条第1項第2号ホ)。
蛍光灯の製造は、順番に禁止されます
「水銀に関する水俣条約」を受けて、水銀による環境の汚染の防止に関する法律(水銀汚染防止法)などにより、一般照明用の蛍光ランプの製造と輸出入が、種類ごとに禁止されます。
| 種類 | 製造・輸出入の禁止 |
|---|---|
| 電球形蛍光ランプ | 2026年1月1日から(30W超のものは2027年1月1日から) |
| コンパクト形蛍光ランプ | 2027年1月1日から |
| 直管形蛍光ランプ | 2028年1月1日から(ハロりん酸塩蛍光体を使ったものは2027年1月1日から) |
| 環形蛍光ランプ | 2028年1月1日から(ハロりん酸塩蛍光体を使ったものは2027年1月1日から) |
禁止されるのは製造と輸出入で、今ある蛍光灯を使い続けることや、在庫品を買うことは禁止されていません(環境省の案内)。ただし、新品が手に入りにくくなっていくため、LEDへの切り替えの計画を立てておくと安心です。
なお、一般照明用の高圧水銀ランプは、2021年1月1日から、すでに製造・輸出入が禁止されています。メタルハライドランプや高圧ナトリウムランプは、この禁止の対象ではありません。
蓄電池の処分
ビルの設備には、停電のときに動かすための蓄電池が、あちこちに入っています。
- キュービクル(高圧受電設備)の直流電源装置
- 自動火災報知設備の受信機の予備電源
- ITV(防犯カメラ)設備の予備電源
- UPS(無停電電源装置)の内蔵蓄電池
使い終わった蓄電池も、事業所から出たものは産業廃棄物です。鉛蓄電池であれば、鉛などの金属、電解液(希硫酸)、外装のプラスチックが組み合わさったものとして扱われます。電解液が強い酸性(pH2.0以下)の場合は、特別管理産業廃棄物の「腐食性の廃酸」にあたることがあります(施行令第2条の4、施行規則第1条の2)。
電池の種類(鉛蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル水素電池など)によって、扱える業者や処理の方法が違います。委託する前に、許可証や契約の内容で、その電池を扱えるかを確認してください。
蓄電池の交換を業者に頼む場合は、古い電池を引き取ってもらえるかも確認しておきます。自社で交換した場合は、蛍光灯などと同じように、保管基準を守って保管し、許可業者に処分を委託します。
現場から:蛍光灯と蓄電池の処分
ビルメンテナンスの現場責任者として、私の現場の状況を紹介します。
蛍光灯は専用の箱にためている
交換した蛍光灯は、専用の箱に入れていきます。私が管理している建物は、築10年から50年ぐらいのものが多く、LEDへの切り替えは少しずつ進んでいますが、蛍光灯はまだまだ残っています。外灯などには、セラミックメタルハライドランプ(セラメタ)も使っています。
蓄電池は、設備ごとにいろいろ
現場で出る蓄電池は、キュービクル、自動火災報知設備の受信機、ITV設備、UPSの内蔵蓄電池などです。私の現場では、これらの蓄電池を自社(直営)で交換しているので、外した電池は現場に残ります。蛍光灯と同じように保管しておき、処理会社に処分を依頼しています。
困っていること:少量だと割高になる
廃棄を外注するときの費用は、ざっくり言うと処分費、運搬費、コンテナ代です。ところが、少量で出しても、コンテナいっぱいで出しても、金額の差はそれほど大きくありません(違うのは、処分費と若干の諸経費ぐらいです)。
そのため、ある程度ためてから出したいのですが、LEDへの切り替えが進むにつれて、蛍光灯がなかなかたまらず、処分のタイミングが難しくなっています。
なお、LED化の工事で出た器具や蛍光灯は、工事のたびに産業廃棄物として処分するのが一般的なので、こちらは現場にたまりません。現場にたまるのは、日常の交換で出た分です。長くためるほど、割れや置場の管理の手間も増えるので、量とタイミングを見ながら処分しています。
根拠となる法令
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第12条(事業者の処理)・第12条の3(管理票)、同法施行令第2条の4(特別管理産業廃棄物)・第6条(産業廃棄物の処理の基準)、同法施行規則第1条の2・第7条の2の4(水銀使用製品産業廃棄物)・第8条(産業廃棄物保管基準)・第8条の4の2(委託契約書)・第8条の20・第8条の21(管理票)・別表第四に定められています。蛍光ランプの製造・輸出入の禁止は、水銀による環境の汚染の防止に関する法律とその施行令によるものです(環境省の案内)。
よくある疑問
蛍光灯を、普通の産業廃棄物と一緒に出してもいいですか
水銀使用製品産業廃棄物は、保管のときにほかの物と混ざらないように分け、委託契約書とマニフェストにもその旨を書く必要があります。廃プラスチックなどと一緒に出す場合も、区分して、業者に伝えてください。
LEDに替えたら、古い蛍光灯の器具はどうなりますか
取り外した器具も、事業所から出たものは産業廃棄物です。器具ごと交換する工事では、撤去した器具や蛍光灯は、工事のたびに産業廃棄物として処分するのが一般的です。誰が処分を手配するのか(工事業者か、建物側か)を、発注の前に確認しておくと安心です。
建物の中で、どのくらいの期間ためておけますか
排出した事業者が、自分の事業場で保管する期間について、廃棄物処理法に上限の日数は定められていません。ただし、保管基準を守ることが条件です。長くためるほど、割れや置場の管理の負担が増えるので、ある程度の量で処分するのが現実的です。


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