ねずみ・昆虫等の防除【建築物衛生法】

建築物衛生法

この調査・防除は何のためにあるのか

ねずみやゴキブリなどの発生を防ぎ、衛生的な環境を保つための制度です。ねずみや害虫は、食品の汚染や感染症の媒介といった衛生上の問題だけでなく、ケーブルをかじって停電や火災の原因になるなど、建物の設備にも被害を与えます。

ポイントは、「出たら駆除する」のではなく、定期的に調査して、発生を未然に防ぐことが求められている点です。

対象になる建物

建築物衛生法上の「特定建築物」(延べ面積3,000平方メートル以上の事務所・店舗・旅館など、学校教育法第1条に定める学校は8,000平方メートル以上)が対象です。対象となる用途の詳しい一覧は「特定建築物の届出」の記事をご覧ください。

調査・防除の頻度

場所 調査の頻度
建物全体 6か月以内ごとに1回(定期に、統一的に)
食料を扱う区域、排水槽・阻集器・廃棄物保管設備の周辺など、特に発生しやすい場所 2か月以内ごとに1回

調査では、ねずみ等の発生場所・生息場所・侵入経路と、被害の状況を確認します。その結果に基づいて、発生を防ぐために必要な措置を行います。

薬剤を使うときのルール

殺そ剤(ねずみ用の薬剤)や殺虫剤を使う場合は、医薬品医療機器等法(薬機法)で承認を受けた医薬品または医薬部外品を使わなければなりません。ホームセンターなどで売られている製品でも、承認を受けていないものは使えないため注意が必要です。

国の考え方:IPM(総合的有害生物管理)

厚生労働省の維持管理の手引き(建築物環境衛生維持管理要領)では、IPM(総合的有害生物管理)という考え方が示されています。薬剤をむやみにまくのではなく、まず調査で生息状況を把握し、清掃・整理整頓や隙間ふさぎなどの環境対策を優先して、必要な場合に限り薬剤を使うという進め方です。

調査結果は、次の3つの水準で判断します。

水準 状態 対応
許容水準 環境衛生上、良好な状態 定期調査を続ける
警戒水準 放置すると問題になる可能性がある状態 整理・整頓・清掃など環境を見直す
措置水準 すぐに対策が必要な状態 環境対策とあわせて駆除を行う

ゴキブリの場合は、粘着トラップで捕まった数をもとに判断します。手引きの目安では、1日・1トラップあたりの捕獲数(捕獲指数)が0.5未満で、1個のトラップの捕獲数が2匹未満、生きたゴキブリを見かけない状態が「許容水準」です。捕獲指数が1以上、または1個のトラップに2匹以上捕まった場合などは「措置水準」になります。

ねずみの場合は、生きた個体が確認されたり、食品や家具などにかじられた跡が見つかったりすれば「措置水準」です。

現場から:ねずみ・ゴキブリ対策の実際

ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の運用をまとめます。

自社(直営)で月1回確認している

私の現場では、専門業者に頼まず、自分たちで調査をしています。月1回の点検の際に、設置した粘着シートにゴキブリがかかっていないかを確認し、ねずみについてはねずみ用のトラップを使っています。法律上は「6か月以内ごとに1回(発生しやすい場所は2か月以内ごとに1回)」ですが、月1回確認していれば、発生の兆しに早く気づけます。

なお、「建築物ねずみ昆虫等防除業」という都道府県知事の登録制度がありますが、これは一定の基準を満たした事業者が登録業者と名乗れる制度です。登録がないと調査・防除ができないというわけではありません。

ゴキブリが出やすいのは水と食べ物のある場所

ゴキブリをたまに見かけるのは、飲食店の厨房、給湯室、そしてラーメン店のスープ(残り汁)を集めておく容器の周りなどです。水気と食べ物のかすがある場所は、どうしても発生しやすくなります。こうした場所の清掃状況や、食べ残し・残り汁の処理の仕方を、テナントと一緒に見直すことも大切です。

私の現場では、今のところ薬剤散布が必要になったことはありません。トラップでの確認と日常の清掃で、許容範囲に収まっています。

ねずみによる停電が何度も起きた

一番大きなトラブルは、ねずみが電気室に入り込み、電気が流れている部分(充電部)に触れて、停電が複数回発生したことです。ねずみの被害は衛生面だけでなく、建物全体の停電という大きな事故につながることがあります。

一般的な対策としては、電気室のケーブルや配管の貫通部、扉の下などの隙間をふさいで侵入経路を断つことが基本です。電気室の中で異常を見つけても、設備に触れるのは大変危険です。電気主任技術者に連絡して対応してもらいましょう。電気設備の点検については「自家用電気工作物の月次点検」の記事もご覧ください。

排水槽まわりも発生しやすい場所の一つです。排水槽の管理については「排水設備の清掃」の記事をご覧ください。

防除を専門業者に頼むときの登録制度や、監督者の資格・講習については、「ねずみ昆虫等防除作業監督者とは」の記事をご覧ください。

根拠となる法令

建築物衛生法第4条(建築物環境衛生管理基準)と、同法施行規則第4条の5第2項に定められています。発生しやすい場所の2か月以内ごとの調査は「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(平成15年厚生労働省告示第119号)に示されています。

違反した場合

管理基準に適合していないだけで直ちに罰則が科されるわけではありません。ただし、管理基準が守られておらず健康を損なうおそれがあるなどの場合には、都道府県知事から改善命令や設備の使用停止などの処分を受けることがあり、これに違反すると30万円以下の罰金の対象となります(建築物衛生法第16条第5号)。また、点検・清掃などの記録を残す帳簿書類を備えていない場合も、30万円以下の罰金の対象です(同条第3号)。

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