特定建築物の届出【建築物衛生法】

建築物衛生法

この届出は何のためにあるのか

建物が一定の用途・規模に当てはまったときに、行政(都道府県知事。保健所を設置する市・特別区では市長・区長)へ「特定建築物」として届け出て、衛生管理の義務の対象になったことを明らかにするための制度です。届出をきっかけに、保健所がその建物を把握し、立入検査などの指導が行われるようになります。

対象になる建物

次の用途(特定用途)に使われる部分の延べ面積が3,000平方メートル以上の建物が対象です。

  • 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場
  • 店舗、事務所
  • 学校(研修所を含む。下記の学校等を除く)
  • 旅館

専ら学校教育法第1条に定める学校(幼稚園、小・中学校、高校、大学、高等専門学校など)や幼保連携型認定こども園として使われる建物は、延べ面積8,000平方メートル以上が基準です。

延べ面積の数え方(ここを間違えやすい)

建物全体の面積ではなく、「特定用途に使われる部分」の面積で判断します。自治体の手引きでは、次の3つを合計して計算するとされています。

区分 具体例 計算に
特定用途の部分そのもの 事務所、店舗の部分 含める
特定用途に附随する共用部分 廊下、階段、トイレ、機械室 含める
特定用途に附属する部分 百貨店内の倉庫、事務所附属の駐車場 含める(※)
特定用途以外の部分 工場、作業場、病院、共同住宅、寄宿舎、駅舎、寺院、教会 含めない

※附属する部分の面積が、特定用途の部分と共用部分の合計より大きい場合は、特定用途以外の部分として扱われます。判断に迷う場合は、管轄の保健所に確認しましょう。

たとえば、事務所と共同住宅(マンション)が入った複合ビルでは、住宅部分を除いた事務所側(共用部分や附属駐車場を含む)の面積で3,000平方メートル以上かどうかを判断します。病院や工場、共同住宅は、どれだけ大きくても、それだけでは特定建築物になりません。

届出のタイミング

  • 新しく使い始めたとき:使用を開始した日から1か月以内
  • 既存の建物が新たに該当したとき(用途変更、増築など):該当することになった日から1か月以内
  • 届出内容が変わったとき・該当しなくなったとき:その日から1か月以内

テナントの入れ替えで特定用途の面積が変わったり、ビル管理技術者が交代したりしたときも、変更の届出が必要です。

届け出る内容

届書には主に次の事項を書きます。

  • 建物の名称・所在場所・用途
  • 特定用途に使われる部分の延べ面積
  • 構造設備の概要
  • 所有者や、維持管理の権原を持つ人の氏名・住所
  • 建築物環境衛生管理技術者の氏名・住所・免状番号(他の特定建築物と兼任している場合は、その建物の名称・所在場所も)
  • 使用を開始した日

ビル管理技術者の選任については「建築物環境衛生管理技術者の選任」の記事をご覧ください。

届出先

建物のある都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)です。実際の窓口は、管轄の保健所などになります。

現場から:届出とその後の流れ

ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の流れをまとめます。

届出はオーナーが行う

届出の義務があるのは、建物の所有者(または建物全体の管理について権原を持つ人)です。私が担当した現場でも、ビルメン会社ではなく、オーナー様が提出していました。提出は電子申請でした。受付の方法(窓口・郵送・電子申請)は自治体によって異なるため、管轄の保健所に確認しておくとスムーズです。

電子申請だと「受付印の控え」が返ってこないことも

ビルメン会社では、社員がビル管理技術者に選任されると手当が付くことがあり、選任されたことを社内で証明する書類が必要になる場合があります。ところが私の現場では、オーナー様が電子申請で届け出たため、窓口提出のときのような受付印入りの控えが返ってこず、社内の選任手続きがうまく進まないということがありました。

自治体によっては、受付印を押した届出書の写しが必要な場合は電子申請ではなく窓口などで提出するよう案内しているところもあります(大阪市など)。控えが必要な事情がある場合は、届出の前にオーナー様と提出方法を相談しておくか、電子申請の受付完了の通知や提出した届書の写しを共有してもらうなど、事前に段取りを決めておくと安心です。

届出から約1か月で立入検査があった

届出の後、1か月ほどで保健所の立入検査がありました。運用を始めて間もない時期でしたが、点検の工程表(年間計画)などを確認され、指摘も受けました。届出をした時点で、すぐに検査に来られてもよいように、年間の点検計画や帳簿類を整えておくことが大切です。立入検査で実際に指摘された内容は「建築物環境衛生管理技術者の選任」の記事で紹介しています。

根拠となる法令

建築物衛生法第2条(特定建築物の定義)、第5条(届出)と、同法施行令第1条(対象の用途・面積)、同法施行規則第1条(届出事項)に定められています。

違反した場合

届出をしない場合や、虚偽の届出をした場合は、30万円以下の罰金の対象となります(建築物衛生法第16条第1号)。

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