貯水槽の清掃【建築物衛生法】

建築物衛生法

この清掃は何のためにあるのか

受水槽や高置水槽の内部を清潔に保ち、安全な水を供給し続けるための定期清掃です。水槽の底には、長い間に砂や鉄さびなどの沈殿物がたまり、壁面には汚れが付着します。これを放置すると、水の色やにおいの異常、衛生上の問題につながります。

対象になる建物

建築物衛生法上の「特定建築物」(延べ面積3,000平方メートル以上の事務所・店舗・旅館など、学校教育法第1条に定める学校は8,000平方メートル以上)が対象です。対象となる用途の詳しい一覧は「特定建築物の届出」の記事をご覧ください。特定建築物でなくても、受水槽の容量が10立方メートルを超える建物は、水道法の「簡易専用水道」として年1回以上の清掃が必要です。

清掃の頻度

1年以内ごとに1回です。

清掃の手順(国の技術上の基準)

清掃の方法は、国の告示で次のように定められています。

  • 順番:受水槽の清掃を行った後に、高置水槽や圧力水槽などの清掃を行います。
  • 清掃:槽内の沈殿物・浮遊物や壁面の付着物を洗浄して取り除き、洗浄に使った水は完全に排出します。
  • 消毒:塩素剤を使って2回以上、槽内を消毒します。消毒が終わったら、使った塩素剤を完全に排除します。
  • 水張り後の水質検査:水を張り終えたら、給水栓で水質を確認します。
検査項目 基準
残留塩素 遊離残留塩素0.2mg/L以上(結合残留塩素の場合は1.5mg/L以上)
色度 5度以下
濁度 2度以下
臭気・味 異常でないこと

ふだんの残留塩素の基準(0.1mg/L以上)より高い値が求められているのは、清掃・消毒の直後であることを確認するためです。日常の水質管理については「給水の水質検査」の記事をご覧ください。

現場から:受水槽清掃の実際

ビルメンテナンスの現場責任者として、受水槽・高置水槽の清掃に立ち会ってきた経験から、実際の流れと注意点をまとめます。

時期は5月〜10月ごろが多い

特に決まった月はありませんが、私の現場では5月から10月ごろに実施することが多かったです。

2槽式なら断水はほとんどない

受水槽は2つの槽に分かれている(2槽式)ことが多く、片方ずつ清掃すれば、もう片方から給水を続けられるため、清掃で断水になることはあまりありません。断水が必要になるとしたら、むしろ増圧給水ポンプ(ブースターポンプ)の点検のときくらいです。

作業時間の目安:一般的な2槽なら半日

おおよその作業時間は次のとおりです。

  • 清掃作業:1槽あたり約20分
  • 塩素による消毒:1槽あたり約30分
  • 排水と給水:水槽の大きさ次第で、それぞれ30分〜1時間程度

一般的な2槽式であれば、半日あれば終わります。清掃後には、残留塩素の測定に加えて、pH・臭い・味・色なども確認していました。

大きな水槽は2日に分けることも

小さな水槽は受水槽と高置水槽を1日で終わらせていましたが、大きな現場では2日に分けて実施していました。容量250立方メートルの受水槽がある現場では、排水と給水だけでもかなりの時間がかかりました。

気をつけたいトラブル

  • 屋上での熱中症:私自身が高置水槽の清掃作業をしていた際、気温が高すぎて熱中症になったことがあります。屋上は日差しを遮るものがなく、夏場は特に危険です。作業時間帯の調整や休憩・水分補給の徹底が欠かせません。
  • 電磁弁とバルブの戻し忘れで給水されない:清掃中は片方の系統ずつ給水を切り替えます。作業後に、ポンプ側の電磁弁が「1系統から給水」、現地のバルブが「2系統だけ開」という食い違った状態になっていて、水が入らず減水警報が出たことがあります。作業終了後は、電磁弁を並列給水(両系統から給水)に戻し、現地のバルブも1系統・2系統とも開の状態に戻すのが正しい状態です。最後に必ず確認しましょう。
  • 電極棒の短絡で満水警報:水位を検知する電極棒の支持材が破損していて、電極棒同士が触れて短絡し、満水警報が出たことがあります。清掃で槽内に入る機会に、電極棒まわりの状態もあわせて点検しておくと安心です。

屋上での作業など、夏場の熱中症対策の義務については、「熱中症対策の義務化(令和7年6月施行)【労働安全衛生法】」をご覧ください。

根拠となる法令

建築物衛生法第4条(建築物環境衛生管理基準)と同法施行規則に定められています。清掃の方法は「空気調和設備等の維持管理及び清掃等に係る技術上の基準」(平成15年厚生労働省告示第119号)に示されています。

違反した場合

管理基準に適合していないだけで直ちに罰則が科されるわけではありません。ただし、管理基準が守られておらず健康を損なうおそれがあるなどの場合には、都道府県知事から改善命令や設備の使用停止などの処分を受けることがあり、これに違反すると30万円以下の罰金の対象となります(建築物衛生法第16条第5号)。また、点検・清掃などの記録を残す帳簿書類を備えていない場合も、30万円以下の罰金の対象です(同条第3号)。

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