この義務は何のためにあるのか
受水槽にいったん水を溜めてから各部屋に供給する仕組みの建物では、水槽の中が汚れると水質事故につながります。水道局の水は受水槽に入った時点で水道局の管理を離れ、そこから先は建物側の責任になります。そのため、建物の所有者(設置者)自身が、水槽の清掃と点検を行うことが義務づけられています。
この記事で紹介するのは、自分たちで行う基本の管理義務です。これとは別に、年1回、外部の検査機関による検査を受ける義務もあります(「簡易専用水道の検査(外部検査)」の記事を参照)。
対象になる建物
水道局から供給される水だけを水源とし、受水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える建物(簡易専用水道)が対象です。
ただし、受水槽がさらに大きく、居住者や給水量が一定の規模を超える施設は、より厳しい管理が求められる「専用水道」に当たる場合があります。受水槽が10立方メートル以下の場合は「小規模貯水槽水道」として、自治体の条例などで管理されます。
管理基準の内容(4つ)
- 清掃:水槽の掃除を毎年1回以上、定期に行うこと
- 点検:水槽の点検などを行い、有害物や汚水などで水が汚染されないよう必要な措置を講じること
- 異常時の水質検査:蛇口の水の色・濁り・におい・味などに異常を感じたときは、必要な項目の水質検査を行うこと
- 危険時の給水停止:水が人の健康を害するおそれがあると知ったときは、ただちに給水を止め、その水を使うのが危険であることを関係者に知らせること
清掃の具体的な手順は「貯水槽の清掃」の記事で紹介しています。
点検の頻度とチェックポイント
点検の回数は法令で細かく決められていませんが、月1回程度の巡回点検が一般的です。主なチェックポイントは次のとおりです。
- 受水槽・高置水槽のマンホール(ふた)が施錠され、すき間がないか
- オーバーフロー管・通気管の先端の防虫網が破れていないか(虫や小動物の侵入経路になります)
- 槽本体や配管にひび割れ・漏水・さびがないか
- 水位が正常か
- ボールタップや定水位弁など、給水を制御する部品が正常に動いているか
- 周囲に汚水・薬品・ごみなど、汚染の原因になるものが置かれていないか
現場から:受水槽の点検の実際
ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の点検の様子をまとめます。
点検は月1回、見るのは施錠・防虫網・漏水・水位
受水槽の点検は、毎日ではなく月1回実施するのが一般的だと思います。主に確認するのは、マンホールの施錠、防虫網、漏水、水位です。物件によっては、ボールタップ(水位に合わせて給水を開け閉めする弁)の動作確認もしていました。
見つけた不具合:防虫網の破れと高置水槽の裂け
- 防虫網の破れ:破れているのを見つけ、取り替えたことがあります。小さな破れでも虫が入る原因になるため、見つけたらすぐに交換します。
- 高置水槽の裂けによる漏水:FRP(繊維強化プラスチック)製の高置水槽の本体が裂けて、水が漏れていたことがあります。かなり経年劣化が進んでいた水槽でした。屋上の高置水槽は日差しや風雨にさらされるため、古い水槽ほど本体の状態もしっかり見ておく必要があります。
残留塩素は週1回、蛇口で測る
残留塩素の測定は、基本は週1回です。測る場所は、どの現場でも、できるだけ貯水槽から離れた蛇口を選んでいました。水槽から遠い蛇口ほど水が配管内にとどまる時間が長く、塩素が減りやすいためです。そこで塩素が確認できれば、建物全体で確保できていると判断しやすくなります。
なお、水道法の簡易専用水道の管理基準には、残留塩素を定期的に測る回数の決まりはありません。一方、延べ面積3,000平方メートル以上の事務所などの「特定建築物」では、建築物衛生法により7日以内ごとに1回の残留塩素の測定が義務づけられており、蛇口の水の遊離残留塩素を0.1mg/L以上に保つことが求められます(「給水の水質検査」の記事を参照)。特定建築物に当たらない建物でも、同じ目安で週1回測っておくと安心です。簡易専用水道の外部検査でも「残留塩素が検出されること」が判定基準の一つになっています。
使用量が少なすぎて塩素が消える物件
注意が必要なのは、水の使用量が受水槽の大きさに比べて少なすぎる物件です。私の担当した物件では、受水槽への給水が4日に1回程度しかなく、水が長く槽内にとどまるため、残留塩素が検出されないことがよくありました。この物件では、残留塩素の測定を毎日行っています。また、この物件には塩素を注入する薬注ポンプが設置されていたため、測定結果を見ながら塩素の濃度や注入量を調整していました。
薬注ポンプがない建物での一般的な対策としては、受水槽の水位の設定を下げて貯める水の量を減らし、水が入れ替わりやすくする方法があります。建物の用途変更やテナントの退去で使用量が減った場合などは、受水槽の容量が今の使い方に合っているかを見直すことも大切です。
根拠となる法令
水道法第34条の2第1項と、水道法施行規則第55条に定められています。
違反した場合
管理基準を守っていないと、都道府県知事(市・特別区の区域では市長・区長)から清掃などの必要な措置をとるよう指示を受けることがあります(水道法第36条第3項)。この指示に従わず、給水を続けることが利用者の利益を害すると認められる場合は、給水停止命令が出されることがあり(同法第37条)、この命令に違反すると1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります(同法第53条第10号)。


コメント