この調査は何のためにあるのか
建物の敷地・外壁・屋根・避難施設・防火区画などに、劣化や不具合がないかを定期的に専門家が調べ、その結果を行政(特定行政庁)に報告する制度です。外壁タイルの落下、避難経路の支障、防火区画の不備などによる事故を未然に防ぐことが目的です。建築基準法第12条に定められた「定期報告制度」の一つで、「建築物調査」とも呼ばれます。
定期報告制度には、この建築物の調査のほかに、次の3つの検査があります。
対象になる建物
対象は、大きく2種類あります。
1. 国が一律に対象と定めている建物
不特定多数の人が利用する特殊建築物のうち、次のようなものです(建築基準法施行令第16条第1項、平成28年国土交通省告示第240号)。
| 用途 | 対象になる主な条件 |
|---|---|
| 劇場、映画館、演芸場、観覧場(屋外観覧場を除く)、公会堂、集会場 | 地階または3階以上にその用途がある、客席の床面積の合計が200平方メートル以上、または劇場・映画館・演芸場で主階が1階にない |
| 病院、診療所(患者の収容施設があるもの)、ホテル、旅館 | 地階または3階以上にその用途がある、または2階のその用途の部分の床面積の合計が300平方メートル以上(病院・診療所は、2階に患者の収容施設がある場合) |
| 高齢者・障害者などが就寝する施設(老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、認知症高齢者グループホーム、障害者グループホームなど) | 地階または3階以上にその用途がある、または2階のその用途の部分の床面積の合計が300平方メートル以上 |
| 体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、水泳場、スポーツの練習場など(学校や、学校に附属する体育館などを除く) | 3階以上にその用途がある、またはその用途の床面積の合計が2,000平方メートル以上 |
| 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、バー、遊技場、飲食店、物品販売店舗など | 地階または3階以上にその用途がある、2階のその用途の部分の床面積の合計が500平方メートル以上、またはその用途の床面積の合計が3,000平方メートル以上 |
いずれも、その用途に使う部分の床面積の合計が200平方メートルを超える特殊建築物(建築基準法第6条第1項第1号の建築物)が前提です。「地階または3階以上にその用途がある」は、地階や3階以上にあるその用途の部分の床面積が、100平方メートルを超える場合です。また、避難階(ふつうは1階)以外の階をこれらの用途に使っていない建物は、対象から除かれます。
一般の共同住宅(マンション)や寄宿舎、学校、事務所ビルなどは、国が一律に対象としているものではありません。ただし、次の「特定行政庁が指定する建物」として、対象になっている場合があります。
2. 特定行政庁(都道府県・市など)が指定する建物
上記以外にも、事務所ビルなどを、特定行政庁が独自に対象として指定している場合があります。対象の範囲は自治体ごとに異なるため、正確には建物のある自治体の建築指導課などに確認する必要があります。
調査の頻度
建物の用途や規模に応じて、おおむね6か月から3年までの間隔で、特定行政庁が定める時期に報告します。実際には、多くの自治体で3年に1回とされています。新築の建物は、完了検査の検査済証を受けた直後の報告時期は除かれます。
調査の主な内容
- 敷地・地盤:地盤沈下、敷地内の通路の確保、塀や擁壁の状態
- 建物の外部:外壁(タイル・モルタルの浮きやひび割れ)、窓枠、看板や室外機などの取り付け状態
- 屋上・屋根:防水、手すり、屋上に設置された工作物の状態
- 建物の内部:防火区画、防火戸(常時閉鎖式のもの)、内装の仕上げ材
- 避難施設:廊下・階段・出入口の幅や障害物、非常用進入口の表示
外壁タイルなどの「10年ごとの全面調査」
タイル貼りやモルタル塗りなどの外壁は、ふだんの調査では手の届く範囲を打診(テストハンマーでたたいて音で浮きを調べる)しますが、これに加えて、おおむね10年に1回、落下すると歩行者などに危害を加えるおそれのある部分について、全面的な打診等による調査が必要です。竣工や外壁改修などから10年を超えた後、最初に行う定期調査のときに実施します。
全面打診は、足場やゴンドラ、高所作業車が必要になり、費用も大きくなります。そのため、赤外線カメラで外壁の温度差から浮きを調べる「赤外線調査」もよく使われています。令和4年(2022年)の告示改正で、ドローン(無人航空機)による赤外線調査も、テストハンマーによる打診と同等以上の精度があるものとして認められるようになりました。
調査できる人
一級建築士・二級建築士、または特定建築物調査員(建築物調査員)の資格を持つ人が調査を行います。資格については「建築物調査員・建築設備検査員とは?」の記事をご覧ください。報告の義務を負うのは、建物の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)です。
ビル管理の立場から気をつけたいこと
調査で指摘されやすい項目の多くは、日常の管理で防げるものです。
- 避難階段や廊下、防火戸の前に物を置かない(テナントへの周知も含む)
- 外壁のひび割れやタイルの浮き、屋上の手すりのさびなどを、日常の巡回で気にかけておく
- 前回の調査で指摘された項目の改善状況を記録しておく(次回の調査で確認されます)
※建築基準法第12条の定期報告制度には、遊園地などにある「遊戯施設」の定期検査も含まれますが、一般的な事務所・商業ビルには通常関係しないため、このサイトでは扱っていません。
根拠となる法令
建築基準法第12条第1項と、建築基準法施行令第16条(対象の建物)、平成28年国土交通省告示第240号(国が対象から除く建物)、建築基準法施行規則第5条(報告の時期)に定められています。調査の項目・方法・判定基準は「平成20年国土交通省告示第282号」で定められています。
違反した場合
調査結果を報告しなかった場合、または虚偽の報告をした場合は、100万円以下の罰金の対象となります(建築基準法第101条第1項第2号)。実際には、罰則の前に、行政からの通知・督促などの段階を経るのが一般的です。


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