この資格は何のためにあるのか
消防設備点検資格者は、消火器・屋内消火栓・自動火災報知設備などの「消防用設備等」の点検を行うための資格です。総務大臣の登録を受けた講習機関(一般財団法人日本消防設備安全センター)の講習を修了し、考査に合格すると免状が交付されます(消防法施行規則第31条の6第7項)。
一定規模以上の建物では、消防用設備等の点検を、消防設備士または消防設備点検資格者に行わせなければなりません(消防法第17条の3の3、消防法施行令第36条第2項)。対象となるのは、主に次の建物です。
- 延べ面積1,000平方メートル以上の特定防火対象物(店舗、ホテル、病院など不特定多数の人が出入りする建物)
- 延べ面積1,000平方メートル以上の非特定防火対象物(事務所、共同住宅など)のうち、消防長または消防署長が指定するもの
- 特定一階段等防火対象物(地下や3階以上に特定用途があり、屋内階段が1つしかない建物)
点検の頻度や報告の方法は消防用設備等の点検・報告をご覧ください。
消防設備士との違い
| 消防設備士 | 消防設備点検資格者 | |
|---|---|---|
| できること | 甲種:工事・整備・点検 乙種:整備・点検 |
点検のみ(工事・整備はできない) |
| 区分 | 甲種(特類・第1〜5類)、乙種(第1〜7類)と、設備ごとに細かく分かれる | 特種・第1種・第2種の3区分(第1種・第2種はそれぞれ機械系・電気系をまとめて点検できる) |
| 取得方法 | 国家試験(消防試験研究センター) | 講習+修了考査(日本消防設備安全センター) |
| 受験・受講の条件 | 乙種は条件なし。甲種は実務経験や資格が必要 | 一定の資格または実務経験が必要(後述) |
| 取得後の講習 | 都道府県知事が行う法定講習(最初は2年以内、以後5年以内ごと) | 5年ごとに再講習 |
消防設備士は「類」ごとに扱える設備が決まっており、たとえば乙種第6類なら消火器、乙種第4類なら自動火災報知設備というように、免状の類の設備しか点検できません。一方、点検資格者は、第1種なら消火器から屋内消火栓・スプリンクラーまで、第2種なら自動火災報知設備から誘導灯・避難器具までと、幅広い設備をまとめて点検できるのが強みです。消防設備士については消防設備士とは?甲種・乙種の違いと取得方法をご覧ください。
第1種・第2種・特種で点検できる設備
点検できる設備の種類は、消防庁の告示(平成16年消防庁告示第10号)で決められています。
| 区分 | 点検できる主な設備 |
|---|---|
| 第1種(主に機械系) | 消火器具、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、屋外消火栓設備、動力消防ポンプ設備、消防用水、連結散水設備、連結送水管、パッケージ型消火設備など |
| 第2種(主に電気系) | 自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、消防機関へ通報する火災報知設備、非常警報器具・非常警報設備(非常ベル・非常放送など)、避難器具、誘導灯、誘導標識、排煙設備、非常コンセント設備、無線通信補助設備など |
| 特種 | 特殊消防用設備等(総務大臣の認定を受けた、通常の基準によらない特殊な設備) |
消防設備士でも点検できる「類以外の設備」
同じ告示により、消防設備士も、自分の類の設備に加えて、関係する一部の設備を点検できます。ビル管理の現場で特に関係が深いのは次の点です。
- 第4類(甲種・乙種)または乙種第7類の消防設備士は、非常警報設備(非常ベル・非常放送)、排煙設備、非常コンセント設備、無線通信補助設備も点検できる
- さらに、その人が電気工事士または電気主任技術者の免状も持っていれば、誘導灯・誘導標識も点検できる
- 第1類・第2類の消防設備士は、動力消防ポンプ設備、消防用水、連結散水設備、連結送水管も点検できる
ビルメンテナンスの仕事では、乙4・乙7と第二種電気工事士の両方を持っている人も多く、その場合は点検資格者がいなくても、自動火災報知設備から誘導灯まで点検できる場合があります。
取得方法
日本消防設備安全センターが行う講習を受け、最後の修了考査に合格すると、区分ごとの免状が交付されます。
受講できる人
講習を受けるには、次のいずれかに当てはまる必要があります(消防法施行規則第31条の6第7項)。
- 消防設備士
- 電気工事士
- 管工事施工管理技士
- 水道法の布設工事監督者の資格がある人
- 建築物調査員・建築設備等検査員
- 一級建築士・二級建築士
- 大学・高専などで機械・電気・工業化学・土木・建築を学び、消防用設備等の工事・整備の実務が1年以上ある人(高校の場合は2年以上)
- 消防用設備等の工事・整備の実務が5年以上ある人
- これらと同等以上の知識・技能があると消防庁長官が認める人
講習の内容
第1種・第2種の講習は、点検制度、消防法規、建築基準法規、火災予防概論(各1時間)、消防用設備等技術基準(6時間)、点検要領(6時間)の合計16時間が基準で、講習の後に2時間の修了考査があります(平成16年消防庁告示第18号)。考査に不合格でも、1年以内に1回だけ再考査を受けられます。
消防設備士の免状を持っている人などは、講習科目の一部が免除されます(同告示)。
受講料(令和6年4月1日現在)
| 講習受講料 | A区分 34,300円/B区分 32,200円(科目免除のある人など) |
|---|---|
| 免状交付手数料 | 1,970円 |
| 再考査手数料 | 3,550円 |
| 再講習受講料 | 8,890円 |
※金額は日本消防設備安全センターの公表資料(令和6年4月1日現在)によります。最新の金額や日程は、同センターのホームページで確認してください。
5年ごとの再講習
免状を取った後も、5年ごとに再講習(5時間程度)を受けて、新しい免状の交付を受ける必要があります。再講習を受けないと、資格を失います(消防法施行規則第31条の6第8項)。再講習はオンラインでも受講できます。
現場から:上長は全種を持ち、自分は「乙6から」の王道ルートを検討中
ビルメンテナンスの現場責任者として、私は消防設備士の乙4・乙6・乙7を持っていますが、消防設備点検資格者は持っていません。職場での経験と、周りから聞いた話をまとめます。
上長が全種を持っていた
私の職場では、上長が点検資格者を全種類持っていました。私の消防設備士の類に当てはまらない設備(誘導灯など)は、上長が点検資格者として点検を担当し、私は補助として作業していました。点検報告書の点検者欄には、実際に点検した資格者の名前を書く必要があるため、誰がどの設備を点検したかを分けて管理することが大切です。
「乙6を取ってから点検資格者」が王道と聞いた
周りからは、まず消防設備士の乙6(消火器)を取り、それから点検資格者を取るのが王道だと聞きました。乙6は受験資格がなく、比較的取りやすい資格です。消防設備士の免状があれば点検資格者講習の受講資格を満たし、一部の科目も免除されるので、理にかなったルートだと思います。
それでも甲4を持っている人が多い
一方で、実際の現場では、点検資格者よりも消防設備士の甲4(自動火災報知設備)を持っている人が多い印象です。点検資格者は点検しかできませんが、甲4なら自動火災報知設備の工事や整備(感知器の交換など)まで行えます。点検で見つかった不良をその場で直せるので、仕事の幅を広げたい人には甲4が選ばれやすいのだと思います。私も今後、甲4を取る予定です。
どちらを取るべきか
- 点検の仕事が中心で、いろいろな設備をまとめて点検したい → 消防設備点検資格者(第1種・第2種)
- 不良箇所の整備や工事までしたい → 消防設備士(特に甲4・乙6)
- ビルメンとして幅広く対応したい → 乙6・乙4などの消防設備士を取った後、必要に応じて点検資格者
根拠となる法令
消防法第17条の3の3(点検・報告)、消防法施行令第36条第2項(資格者による点検が必要な建物)、消防法施行規則第31条の6第7項・第8項(消防設備点検資格者の要件・資格の喪失)、平成16年消防庁告示第10号(点検できる設備の種類)、平成16年消防庁告示第18号(講習の基準)に定められています。


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