防火管理者とは?甲種・乙種の違いと講習の受け方

消防法

この資格は何のためにあるのか

防火管理者は、建物の火災を防ぎ、火災が起きたときの被害を小さくするために、建物ごとに定めなければならない責任者です。消防法第8条で、一定規模以上の学校・病院・工場・事務所・店舗・複合施設などの管理について権原を有する者(所有者や、賃貸借で管理を任されている人など)は、防火管理者を定め、消防計画の作成や避難訓練、消防用設備等の点検・整備などを行わせなければならない、とされています。

どの建物で防火管理者が必要になるか、選任後の届出の手順は、防火管理者の選任・消防計画の届出で解説しています。この記事では、防火管理者になるための「資格」と「講習」に絞って説明します。

防火管理者になれる人

防火管理者になるには、次の2つの条件を満たす必要があります(消防法施行令第3条)。

  • その建物で、防火管理上必要な業務を適切に行える管理的または監督的な地位にあること
  • 建物の区分に応じた資格を持っていること

つまり、資格を持っていても、役職上の立場がなければ選任できません。資格は、建物の規模によって「甲種」と「乙種」に分かれます。

甲種と乙種の違い

  • 甲種防火管理者:大規模な建物(甲種防火対象物)で必要。乙種の建物でも選任できます。
  • 乙種防火管理者:小規模な建物(乙種防火対象物)でのみ選任できます。

防火管理者が必要な建物のうち、小規模なものが乙種防火対象物です。延べ面積が、飲食店・ホテル・病院・百貨店など不特定多数が利用する用途の建物で300平方メートル未満、事務所・共同住宅・工場などその他の用途の建物で500平方メートル未満のものが対象です(施行令第3条第1項第2号)。迷ったときは、将来の建物の変更や転勤を考えて、甲種を受講しておくと使える範囲が広がります。

資格の取り方:講習を修了する

最も一般的な方法は、防火管理講習を受けて修了することです。法令上は、講習の課程を修了した人に修了証が交付される仕組みです(施行規則第2条の3第5項)。

講習 講習時間 対象
甲種防火管理新規講習 おおむね10時間 初めて甲種の資格を取る人
乙種防火管理講習 おおむね5時間 乙種の資格を取る人
甲種防火管理再講習 おおむね2時間 後述の建物の甲種防火管理者

講習時間は消防法施行規則第2条の3に定められています。講習では、防火管理の意義と制度、火気の取扱いの監督、消防用設備等の点検・整備と避難施設の維持管理、消火・通報・避難訓練、防火管理上必要な教育、消防計画の作成などを学びます(乙種は、これらの基礎的な内容)。

講習の実施機関と申し込み

講習を行うのは、次の機関です(施行令第3条)。

  • 都道府県知事
  • 消防本部と消防署を置く市町村の消防長
  • 総務大臣の登録を受けた法人(登録講習機関。日本防火・防災協会などがあります)

日程、場所、受講料、申込方法は、実施機関ごとに異なります。たとえば東京都内の講習は東京消防庁が実施しており、オンライン講習と実技講習を組み合わせた形式もあります。申し込みの前に、お住まいの地域の消防署または登録講習機関の案内で、最新の日程と受講料を必ず確認してください。受講料は機関によって異なります。

講習を受けなくても甲種になれる人

次のような人は、甲種防火管理講習を受けなくても、甲種防火管理者の資格を持つとされています(施行令第3条第1項第1号、施行規則第2条)。

  • 大学・高等専門学校で、総務大臣が指定する防災に関する学科または課程を修めて卒業し、1年以上防火管理の実務経験がある人
  • 市町村の消防職員で、管理的または監督的な職に1年以上あった人
  • 国・都道府県の消防事務に従事する職員で、1年以上管理的または監督的な職にあった人
  • 警察官などで、3年以上管理的または監督的な職にあった人
  • 労働安全衛生法に基づく安全管理者に選任された人
  • 防火対象物点検資格者の免状の交付を受けている人
  • 危険物保安監督者に選任された甲種危険物取扱者
  • 建築主事・一級建築士などで、1年以上防火管理の実務経験がある人
  • 市町村の消防団員で、3年以上管理的または監督的な職にあった人
  • このほか、消防庁長官が定める人

対象になるかは、勤務先の履歴や資格の内容によって細かく判断されます。該当すると思う場合は、選任の届出の前に、所轄の消防署に確認してください。

資格を取った後:再講習

甲種防火管理者のうち、次の建物の防火管理者は、新規講習の後に再講習を受ける必要があります(施行規則第2条の3第1項、施行令第4条の2の2)。

  • 劇場、飲食店、物品販売店舗、ホテル、病院、福祉施設など、不特定多数の人が利用する一定の用途の防火対象物で、収容人員が300人以上のもの

再講習は、おおむね過去5年間の防火管理に関する法令の改正の概要と、火災事例の研究を内容とする、おおむね2時間の講習です。受講の期限は、自治体の案内では、最後の講習を修了した後、最初に来る4月1日から5年以内とされています。対象かどうかや期限は、建物の用途や収容人員で変わるので、実施機関の案内で確認してください。

防火管理者の仕事(資格を取ったら何をするか)

防火管理者の仕事は、施行令第3条の2に定められています。

  • 消防計画を作成し、所轄の消防署に届け出る
  • 消防計画に基づいて、消火・通報・避難の訓練を行う
  • 消防用設備等の点検・整備を行う
  • 火気の使用・取扱いを監督する
  • 避難や防火のために必要な構造・設備を維持管理する
  • 収容人員を管理する

必要に応じて、建物の管理について権原を有する者(オーナーなど)の指示を求めること、消防用設備等の点検や火気の監督を行うときは、火元責任者などに必要な指示を与えること、も定められています。

現場から:防火管理者と、資格を取る機会

私はビルメンテナンスの現場責任者ですが、防火管理講習はまだ受けたことがありません。私が管理しているビルの防火管理者は、オーナー様の側の方です。私は、防火管理者の仕事のうち、避難訓練の補助などを担当しています。

私の勤務先では、会社の業務として防火管理講習を受ける場合は、費用が全額補助されます。会社によっては、資格の取得を支援する制度があるので、受講を考えている人は、まず勤務先に確認してみる価値があります。

現場で感じるのは、防火管理者の立場にあまり「強制力」がないことです。各テナントに指摘をしても、結局従ってもらえなければ、同じ状況が続いてしまいます。

制度上も、防火管理者は火元責任者などに「指示を与える」立場ですが(施行令第3条の2第4項)、防火管理が行われていないときに、消防長や消防署長が命令を出す相手は、防火管理者ではなく、建物の管理について権原を有する者です(消防法第8条第3項・第4項)。そのため、防火管理者が指摘しても改善されない場合は、権原を有する者(オーナー様など)に状況を伝えて、対応を依頼する流れが基本になります。

根拠となる法令

消防法第8条(防火管理者の選任)、消防法施行令第3条(防火管理者の資格)・第3条の2(防火管理者の責務)・第4条の2の2、消防法施行規則第2条(学識経験者)・第2条の3(防火管理講習)に定められています。

よくある疑問

防火管理者の資格に、更新や有効期限はありますか

甲種・乙種の資格そのものに有効期限はありません。ただし、前述のとおり、一定の建物の甲種防火管理者には、再講習の受講が必要です。

同じ建物のテナントが、それぞれ防火管理者を選任する必要がありますか

管理について権原が分かれている建物では、テナントごとの防火管理者のほか、建物全体を統括する統括防火管理者が必要になる場合があります。詳しくは、防火管理者の選任・消防計画の届出をご覧ください。

避難訓練は、防火管理者が行うのですか

消火・通報・避難の訓練の実施は、防火管理者の仕事です。訓練の回数や通報の手続きは、消火訓練・避難訓練の実施で解説しています。

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