この点検は何のためにあるのか
停電時に、スプリンクラーのポンプや屋内消火栓のポンプ、排煙機など、消防用設備等を動かす非常用発電機が、いざという時に実際にきちんと作動するかを確認するための点検です。ふだん動かさない設備だからこそ、定期的な確認が欠かせません。火災で停電した時に発電機が動かなければ、消火設備も止まってしまいます。
対象になる建物
消防用設備等の非常電源として、非常用発電機(自家発電設備)を設置している防火対象物が対象です。
点検の頻度と内容
| 点検の種類 | 頻度 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 機器点検 | 6か月に1回 | 外観、燃料・冷却水・潤滑油の量、蓄電池、始動装置などの確認と、無負荷での試運転 |
| 総合点検 | 1年に1回 | 停電を想定した自動起動の確認、切替の確認、そして下記の「負荷運転」または「内部観察等」 |
いずれも、消防用設備等の点検の一部として行い、結果を消防署に報告します。報告の頻度などは「消防用設備等の点検・報告」の記事をご覧ください。
負荷運転(負荷試験)とは
発電機に実際に電気の負荷をかけて運転し、必要な電気を安定して出せるかを確かめる点検です。無負荷の試運転だけでは、実際の火災時に負荷がかかったときに出力が不足したり、止まったりする不具合を見つけられないためです。一般に、定格出力の30%以上の負荷をかけて運転します。方法は次の2つがあります。
- 実負荷試験:建物の消防用設備など、実際の設備に電気を送って運転する方法
- 模擬負荷試験(疑似負荷試験):試験用の負荷装置を持ち込み、発電機につないで運転する方法。建物を停電させる必要がありません。
平成30年の改正で変わったこと
平成30年(2018年)6月1日から、点検の方法が次のように見直されました。
- 内部観察等の追加:負荷運転の代わりに、エンジン内部の状態などを確認する「内部観察等」を行うこともできるようになりました。
- 6年に1回への延長:潤滑油や冷却水、部品の交換など、運転性能を維持するための「予防的な保全策」を毎年行っている場合は、負荷運転・内部観察等を6年に1回に延ばすことができます。
- ガスタービンは負荷運転不要:原動機にガスタービンを使う発電機は、負荷運転が不要になりました。
- 換気性能の点検:負荷運転時ではなく、無負荷運転時などに行えばよいことになりました。
現場から:非常用発電機の管理の実際
ビルメンテナンスの現場責任者としての経験から、実際の運用をまとめます。
ビルメンは月2回の無負荷運転と月2回の目視点検
法定の点検とは別に、私の現場では、ビルメンが月2回の無負荷運転と、月2回の目視点検を行っています。ふだんから定期的にエンジンを回しておくことで、いざという時に動かないというリスクを減らせます。負荷試験は、点検業者に実施してもらっています。
複数台あるので、実負荷と模擬負荷の両方で試験
私の現場は非常用発電機が複数台ある比較的大きな施設のため、実負荷試験と模擬負荷試験の両方を行っています。内部観察等や、6年に1回に延ばす特例は使っていません。どの方法が向いているかは、発電機の台数や容量、建物を停電できるかどうかなどによって変わります。
見つかった不具合:蓄電池の劣化で起動しなかった
- 蓄電池の経年劣化で起動できなかった:発電機のエンジンを始動させるための蓄電池(バッテリー)が経年劣化しており、始動に必要な電圧が足りず、起動がかからなかったことがあります。蓄電池が弱っていると、発電機の本体がどれだけ健全でも起動できません。蓄電池の電圧や交換時期は、日常の点検でもしっかり確認しておく必要があります。
- 電圧の不平衡の警報(まれなケース):電圧の不平衡(三相の電圧のバランスの崩れ)の警報が出たこともあります。これはかなりまれなケースで、敷地内の建物を順番に解体している途中のため、発電機回路(G回路)につながっている負荷が一部の相に偏ってしまったことが原因でした。建物の解体や改修で発電機回路につながる設備が変わるときは、相ごとの負荷のバランスにも注意が必要です。
受変電設備の年次点検で確認される非常用発電機の自動起動については「自家用電気工作物の年次点検」の記事もご覧ください。
根拠となる法令
消防法第17条の3の3(消防用設備等の点検・報告)と、これに基づく消防庁告示の点検基準(非常電源(自家発電設備)の点検要領)に定められています。平成30年の改正内容は、消防庁の「自家発電設備の点検基準等の改正」のページで確認できます。
違反した場合
消防用設備等の点検結果を報告しなかった場合、または虚偽の報告をした場合は、30万円以下の罰金または拘留の対象となります(消防法第44条第11号)。


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