この記事で伝えたいこと
このサイトでは基本的に「法律で義務づけられている点検」を紹介していますが、機械式駐車場の点検は例外的に、国が法律で義務づけている「法定点検」ではありません。とはいえ、実務上は非常に重要なため、あえて取り上げます。
法律上の位置づけ
エレベーターの定期検査などとは異なり、機械式駐車場には、建築基準法のような国が定めた定期検査の義務がありません。ただし、設備の所有者や管理組合には、利用者の安全を守る「安全配慮義務」があり、国土交通省が示す「機械式駐車設備の適切な維持管理に関する指針」でも、専門業者による定期的な保守点検が求められています。この指針は、主に一般向けの路外駐車場を対象としたものですが、マンションやビルの駐車場など、それ以外の機械式駐車設備でも指針に準拠することが推奨されています。
推奨される点検の頻度
国土交通省は、機種や使用頻度などに応じて、1〜3か月以内に1度を目安に専門技術者による点検を受けることを求めています。実際には、設備の種類によって年4回・6回、タワー式では年12回程度の点検を行っている例が多いです。
管理者に求められること
指針では、点検を業者に任せるだけでなく、管理者(所有者や管理組合など)が次のようなことを行うよう定めています。
- 標識の掲示やアナウンスなどで、利用者に安全な使い方を促すこと
- 安全が確保されていないと判断した場合は、すぐに使用を中止し、保守点検業者に連絡すること
- 保守点検業者を価格だけで選ばず、技術者の能力や実績、緊急時の対応力などを総合的に評価すること
ビルメンテナンスの現場でよく聞く課題
私自身は機械式駐車場を直接管理した経験はありませんが、ビルメンテナンスの仕事をしていると、次のような話をよく耳にします。
利用者が小物を落とすことが多い
車の乗り降りの際に、鍵やスマートフォンなどの小物を装置のすき間やピット(地下部分)に落としてしまうケースが多いと聞きます。装置の中やピットに自分で入って拾おうとするのは大変危険です。落とし物をしたときは、管理者や保守点検業者に連絡して、装置を安全な状態にしてから回収してもらうよう、利用者に周知しておくことが大切です。
老朽化したときの更新が難しい
機械式駐車場は、古くなったときの修繕や装置の入れ替えに多額の費用がかかります。国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、機械式駐車場がある場合、将来の修繕工事に備えて、通常の修繕積立金とは別に上乗せして積み立てる考え方を示しています。
ガイドラインが示す「1台あたり毎月いくら積み立てておくべきか」の目安は、次のとおりです。
| 機種 | 1台あたりの積立額の目安(月額) |
|---|---|
| 2段(ピット1段)昇降式 | 6,450円 |
| 3段(ピット2段)昇降式 | 5,840円 |
| 3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210円 |
| 4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235円 |
| エレベーター方式・垂直循環方式 | 4,645円 |
たとえば30台分の機械式駐車場なら、毎月およそ14万〜22万円、年間では約170万〜260万円を、将来の修繕のために積み立てておく計算になります。これだけの金額を用意できていないと、いざ更新が必要になったときに費用が足りず、更新が難しくなります。
利用者で費用を分け合う物件では、維持そのものが厳しくなることも
物件によっては、駐車場の利用者が維持費を分担して管理しているところがあります。そうした物件では、車を手放す人が増えて利用者が減ると、一人あたりの負担が重くなり、点検などのメンテナンスを続けることすら難しくなっているという話も聞きます。空き区画が増えても点検や修繕の費用はかかり続けるため、早めに長期的な費用計画を立てておくことが重要です。
点検を怠った場合のリスク
法律上の直接的な罰則はありませんが、点検不足による事故が発生した場合、管理者としての「安全配慮義務」違反を問われ、損害賠償責任を負う可能性があります。

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